治療ガイドラインに従った大腸がんの治療方針について
2017.07.11
■「治療ガイドライン」とは?
皆さんは、治療ガイドラインという言葉をご存知ですか?
これは医師がどのような治療方針を立てていくかの指針となるもので、約2年に一度改定されています。大腸がんの治療ガイドラインの目的は、
- 大腸がんの標準的な治療方針を示すこと
- 大腸がんの治療の施設間格差をなくすこと
- 過剰診察・治療、過小診察・治療をなくすこと
- 一般に公開し、医療者と患者さんの相互理解を深めること
となっています。つまり、患者さんがどの病院に行っても一定の治療を受けることができるためのもので、もちろん医師に「最新のガイドラインではどうなっていますか?」と質問して構わないのです。
今回はこのガイドラインに沿った大腸がん治療についてお話します。
■大腸がんとはどんながん?
まずは大腸がんについて説明します。
大腸がんは、盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸・肛門と続く消化器官に発生するがんです。
日本人では、直腸からS状結腸にかけての発生が、大腸がん全体の60%を占めています。大腸がんの罹患率は、人口10万人に対して男性64.1人、女性36.1人です。大腸がんの危険因子は次のとおりです。
- 年齢50歳以上
- 家族歴
- 高カロリー摂取・肥満
- 過量のアルコール
- 喫煙
このうち2は特殊な遺伝的因子ですが、それ以外は当てはまる方は特に注意し、予防につながる適度な運動と食物繊維の摂取を心がけましょう。
日本では今、大腸がん激増しています。その要因として、動物性脂肪の摂取が増加したことがあげられます。世界的にも、肉の消費量が多い国ほど患者が多いのです。
■がんの進行度により治療方針の違い
大腸はパイプ状の器官で、内側から順に、粘膜・粘膜下層・筋層・漿膜(しょうまく)下層、漿膜の順に重なっています。大腸がんでは、このうち粘膜だけまたは粘膜下層まで侵されたものを早期がんと呼び、基本的に内視鏡で取り除くが可能です。早期発見のためには、ぜひ検診を受け、便潜血反応で陽性だった場合は必ずその次の検査を受けましょう。
発見が遅れ、深い層まで侵された進行がんについては開腹手術・腹腔鏡手術を行い、併せて化学療法も開始します。これらの細かい判断基準も、ガイドラインに詳しく明記されています。
また将来がん化する恐れのある腺腫についても、その大きさや状況によってどのような治療が適しているかが記載されていますし。摘出を受けたあとの経過観察(時期や検査内容など)についても細かく書かれています。
■一般の人も入手できる!
この「治療ガイドライン」は医師用ではありますが、一般の方も書店やネット書店で入手することができます。もしも自分や家族が病気になったら、これを参考に医師と意見を交わし、納得して治療に臨むと良いと思います。ただし、研究や臨床の報告を元に改訂されていきますので、「最善の治療」とされるものの内容が変わることがあります。ご理解の上活用していただければと思います。
(一財)防府消化器病センター
防府胃腸病院
副院長 松岡 功治
この記事は、第111回健康公開講座の内容を掲載しております。
健康講座は、隔月でアスピラートで開催しております。
開催の日程は、【健康公開講座開催一覧】に掲載しておりますので、ご覧ください。
>>健康公開講座開催一覧
■第111回健康公開講座
治療ガイドラインに従った
大腸がんの治療方針について
開催日:12月5日(月)午後7時~
会場:アスピラート3階音楽ホール
主催:一般財団法人防府消化器病センター
後援:防府ユネスコ協会
またこの記事は、「Clubわっしょいマガジン Vol.8」に掲載されました。
>>FMわっしょい